中学生といえば食べ盛りの育ちざかりであることは、誰も異論はないでしょう。
息子や娘の3杯飯に、炊飯ジャーからご飯をよそる、誰かに逢いたいわけでもないのに、しゃもじを持つその手が震える。「エンゲル係数」という懐かしの昭和ワードが、切れかけた白熱球のごとく脳内に点滅…そんな経験、皆さんにもあるかもしれません。
では、そんな育ち盛りを支えるのが「学校給食」であることにも、どなたも異論はないでしょう。ひとつ前のブログで述べた通り、福岡県では60の自治体の内、54(9割)の自治体が、「学校給食法」に定められた「学校給食実施基準」に照らして、安心安全で栄養バランスのとれた学校給食を、授業のある日は毎回用意してくれています。
大野城市の『ランチ給食サービス』のように、言葉遊び的に、食器は全員分ない(中学生3000人に対し、2000人分のみ)けど“全員を対象に用意している”という意味ではなく、本当の意味で食事のゲンブツが生徒全員の机の上に用意されます。
今回はその「学校給食実施基準」の中に設定された“学校給食ってこんなものですよ”、というルールの内の1つ、「学校給食摂取基準」について詳しく見てみましょう。
『一般社団法人Jミルクホームページより引用』
「学校給食摂取基準」というのは何か。簡単に言うと、3杯飯育ち盛り中学生が1日に必要な栄養素の約半分を補える、栄養バランス表です。学校給食にはこの表の栄養素が毎回詰まっているのです。
これが定められた背景には、現代社会において、子どもたちが朝食を食べなかったり、孤食であったり、置かれた家庭環境によって炭水化物、糖質、脂質ばかりを摂取し、肥満傾向であることなどが挙げられます。
2005年に制定された食育基本法の冒頭は『子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。』と高らかに謳っています。
学校給食法はこの食育基本法の制定後、2008年に「学校給食」を、ただ貧しい子どもにも栄養を摂取させるという戦後の命題だけでなく、「食育」を学ぶ教科書、という新たな役割にその価値を押し上げたのです。
さて、前置きが長くなりました。福岡県の9割の自治体では、上記の栄養バランス表に沿った「学校給食」を生徒全員が週5日食べていることは分かりましたね?では、ひるがえって大野城市の中学生約3000人が学校で食べている「選択制給食」の中身を紐解いてみましょう。
その1:家庭弁当。なんと7割(ほとんど:2100人)の生徒が家から弁当を持参しています。この時期は、真夏の食中毒の危険も顧みず、保冷剤でパンパンに膨らんだ保冷バッグを家からえっちらおっちら運んでいます。
また、“弁当”と書きましたが、本当は弁当とは限りません。コンビニやどこかで買ったパンやおにぎり、お菓子、白いご飯に海苔だけ、何も持ってきていない!もこの7割の生徒に含まれています。
その2:業者のパンかおにぎり。約1割(300人)の生徒が業者のパンかおにぎりを朝注文しています。中学校によって異なりますが、A中学校はパン2個で250円。3個で350円です。大野城市役所の売店で、中学校で販売されているのと同じパンを購入し写真に撮りました。この日はメロンパン、シナモンロール、カレーパンでした。
H中学校は生徒数が多く、希望のパンを買えずに「ごめんね」シールが貼ってあるパンが来ることもあるそうです。そのため、アレルギーのある子は「ごめんね」パンだと食べられないため、パンを優先的に買える日(学年ごとに設定)でないと、パンの注文ができないと聞いております。
その3:『ランチ給食サービス』業者の外注弁当で、利用率は2割(2021年度)。食材仕入れ、献立作成、調理、配送などすべてを委託しており、学校給食法の学校給食実施基準には照らしておりません。
学校給食摂取基準を尊守しているかどうかも確認できておりませんが、毎日食べるわけではない時点で、学校給食法の理念である「食育」の教科書としての役割も担えていません。
また、このランチは親が注文してくれないと子どもは食べられず、学校に来て机に座ったら無条件に提供してもらえる「学校給食」ではない、という致命的な欠陥があり、弱い立場の子どもを守るセーフティネットとしての機能すら果たしていません。
そのお話はまた別の機会にするとして、本題に戻りましょう。栄養学的に上記の1家庭弁当と2パンは、9割の自治体で生徒全員に授業のある日は提供される「学校給食」と比べて、栄養素はどうなっているのか、会所属の医師に協力してもらい、比較しました。
まずは家庭弁当+牛乳の栄養素を見ていきましょう。↓
●家庭弁当の栄養素は、学校給食摂取基準と比べて、脂質と塩分の摂りすぎで足りない栄養素が目立ちます。
では業者パン+牛乳はどうでしょうか。↓
●パンに至っては、脂質の摂りすぎで、中学生が育つための栄養素がほとんど不足しています。※詳しい資料はこちら↓↓↓
以上のことから、大野城市やその他の自治体で未だに採用される「選択制給食」は、栄養学という客観的見地から冷静に考察しても、中学生の学校給食としてふさわしくありません。
つまり、お弁当を作りたくない女たちがヒステリックに全員制給食を叫んでいるのではありません。子どもたちにとって本当に必要なのは、欠食やパン、好きなものばかりが詰まった家の弁当を“選べる”選択制給食ではありません。
どの家庭の子どもでも、きちんと栄養を摂り、将来自立した後も健康で楽しい人生を送れるよう、食を選択する力を学ぶことのできる、食育の教科書=「全員制学校給食」をなんの心配もなく食べられる環境です。
また、全員制給食でも牛乳の不飲届のように、届けを出して家庭弁当を持参することは可能です。学校給食は、カレーはどうしても食べられない、アレルギー、宗教上の理由など本人の努力ではどうにもできない場合は、担任の先生に相談の上、柔軟に対応できるべきものです。
全員制給食というとまるで「強制」のようにミスリードしようとする方がいらっしゃいますので、毎回全員制という言葉を使うときは、合わせてその事実をご案内しております。
以上、夏祭りは市民の良心の塊なので、なるべくたくさん開催されたら、子どもたちが喜ぶなぁ、と思う夏の夕暮れからお届けしました。
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